「PUFAをできるだけ控えたいけれど、魚は何を選べばいい?」
魚介類を選ぶとき、EPA・DHAなどのオメガ3だけでなく、もうひとつ知っておきたいのが水銀などの環境由来物質です。
魚介類には良質なたんぱく質やミネラルなどさまざまな栄養素が含まれます。一方、種類によって脂質やPUFA量は大きく異なり、さらに一部の大型魚では食物連鎖によってメチル水銀が蓄積しやすいことが知られています。
そこで今回は、
① PUFA量
② メチル水銀
③ その他の重金属・元素
の3つの視点から、魚介類の選び方を整理してみます。
※PUFAを控えるという考え方は一般的な栄養指針とは異なる食事上の選択肢の一つです。一般的な栄養学ではEPA・DHAを含む魚介類を食べる健康上のメリットも知られています。
なぜ大きな魚ほど水銀が多くなりやすいの?
海の中には、ごく微量の水銀が存在しています。
その一部が微生物によってメチル水銀となり、プランクトン→小魚→中型魚→大型の肉食魚という食物連鎖を通して少しずつ蓄積されます。
このため一般的には、大型で、肉食性が強く、寿命の長い魚ほどメチル水銀濃度が高くなりやすいという傾向があります。
国立水俣病総合研究センターも、小型魚より大型魚、草食魚より肉食魚、さらに寿命の長い深海魚ほどメチル水銀濃度が高くなる傾向を説明しています。
そのため、「魚が大きいから危険」ではなく、「大型・肉食・長寿という条件が重なるほど蓄積しやすい」と理解できます。
PUFA × 水銀で選ぶ魚介類早見表
PUFA量は主に文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」の可食部100gあたりのn-3系多価不飽和脂肪酸を参考にしています。
水銀欄は、厚生労働省の妊婦向け注意事項と、食物連鎖による蓄積傾向を参考にした「選ぶ際の目安」です。
| 魚介類 | n-3系PUFAの目安 | PUFA視点 | 水銀面の見方 | 日常の選び方 |
| マダラ | 約0.07g | ◎かなり少ない | ◯比較的少ない | ◎ |
| 真だこ | 約0.07g | ◎かなり少ない | ◯比較的少ない | ◎ |
| エビ | 約0.08g前後 | ◎かなり少ない | ◯比較的少ない | ◎ |
| カニ | 約0.1g前後 | ◎かなり少ない | ◯比較的少ない | ◎ |
| ホタテ | 約0.12g | ◎かなり少ない | ◯比較的少ない | ◎ |
| あさり・はまぐり | 約0.1g以下〜 | ◎かなり少ない | ◯比較的少ない | ◎ |
| マグロ赤身 | 約0.17g※クロマグロ | ◎少ない | ▲大型種は注意 | △ |
| 春獲りカツオ | 約0.17g | ◎少ない | ◯〜△多少注意 | ◯ |
| スルメイカ | 約0.18g | ◎〜◯ | ◯比較的少ない | ◎ |
| カレイ | 約0.35g前後 | ◯少ない | ◯比較的少ない | ◎〜◯ |
| ヒラメ | 約0.5g前後 | ◯少ない | ◯比較的少ない | ◯ |
| 鮭 | 約0.9g前後※種類差あり | △やや注意 | ◯比較的少ない | ◯ |
| メカジキ | 約0.92g | △やや注意 | ▲注意 | △〜▲ |
| 天然真鯛 | 約1.16g | △やや注意 | ◯〜△多少注意 | △ |
| サバ | 約1g〜 | △〜▲注意 | ◯比較的少ない | △〜▲ |
| サワラ | 約1.70g | ▲やや多め | △やや注意 | △〜▲ |
| イワシ | 約2g前後 | ▲多め | ◯比較的少ない | ▲ |
| 養殖サーモン | 約2g前後 | ▲多め | ◯比較的少ない | ▲ |
| ブリ | 約3g以上 | ▲かなり多い | △やや注意 | ▲▲ |
| サンマ | 約5.6g | ▲▲非常に多い | ◯比較的少ない | ▲▲ |
| クロマグロ・トロ | 約5.8g | ▲▲非常に多い | ▲大型魚 | ▲▲ |
一番興味深いのは「マグロの赤身」
PUFAだけを比較すると、天然クロマグロ赤身はかなり魅力的に見えます。
100gあたり、脂質 約1.4g、n-3系PUFA 約0.17gとかなり低脂質だからです。ところが水銀という別の視点を加えると、評価が変わります。
厚生労働省は妊婦に対して、クロマグロ・メバチ・メカジキ・キンメダイなどを、1回約80gとして週1回程度までとする目安を示しています。これは一般成人に同じ制限を求めるものではありません。
厚生労働省も、日本人の平均的な水銀摂取量からみて一般に健康影響が懸念される状況ではなく、魚介類を避けることを推奨しているわけではないと説明しています。
PUFAが少ないからマグロ赤身を毎日食べるよりも、タラ・エビ・イカ・タコ・貝類などとローテーションで色々な魚介類を食べることで、ひとつの魚種への偏りを避けることができます。
メカジキはPUFAより「水銀」を意識したい魚
メカジキは100gあたり、脂質 約7.6g、n-3系PUFA 約0.92gです。PUFAだけを見ると極端に多い魚ではありません。
しかし厚生労働省の国内調査では、メカジキのメチル水銀濃度平均値は0.674ppmと報告され、妊婦向け注意対象にも含まれています。
PUFA:△ 水銀:▲になります。
魚選びでは、このようにひとつの数値だけでは判断できないことが分かります。
小さな魚なら安心?
メチル水銀については、一般的には小型魚のほうが蓄積量が少なくなる傾向があります。
イワシなどの小型魚は、メチル水銀という意味では大型マグロやメカジキより選びやすい魚です。
しかし、PUFAという観点では、イワシはEPA・DHAなどのn-3系PUFAが多いため、PUFAを控える食事では評価が逆になります。
つまり、水銀だけなら小型青魚が選びやすい、PUFAだけなら低脂肪の白身魚が選びやすい
という違いがあります。そのためにも「PUFA × 水銀」の両方を見る意味があります。
水銀は調理で減らない
残念ながら、調理で水銀が減ることはほとんどありません。メチル水銀は脂肪に溶け込んでいるのではなく、魚のタンパク質中のアミノ酸と結合しています。
そのため、焼く、煮る、茹でる、といった通常の調理によって、メチル水銀は除去されません。
水銀については、「魚の種類と食べる頻度」を考えることが大切です。
水銀以外の重金属は?
魚介類について考えるときは、メチル水銀が最も分かりやすいテーマですが、それ以外にも環境中の元素が含まれることがあります。
① カドミウム
カドミウムは自然界にも存在する金属です。
国際的な食品規格では、海産二枚貝、イカ・タコなどの頭足類についてカドミウムの基準が設定されています。
特に頭足類の国際基準は内臓を除去したものを対象としている点がポイントです。
イカ・タコ・エビ・カニは身の部分なら過度に心配する必要はありませんが、カドミウムは内臓に蓄積しやすいため、カニ味噌などの内臓や、塩辛などを頻繁に大量摂取しないことが大切です。
② ヒ素
海産物にはヒ素も含まれています。
ヒ素には、「無機ヒ素」「有機ヒ素」があり、健康影響がより問題になるのは一般に無機ヒ素とされています。
食品安全委員会によると、魚介の中のヒ素は主として有機ヒ素として存在しています。一方、海藻には無機ヒ素が含まれることがあります。
中でもひじきには比較的多く含まれてますが、無機ヒ素は水溶性で水温が高いほど溶け出すとされています。
ひじきを食べる時は、下処理をすることで(水で戻して茹でこぼしてから水洗いをする)80〜90%が流れ出るとされており、安全とされています。
「魚を避ける」のではなく、種類を分散する
ここまで読むと、「魚介類はあまり食べないほうがいいのでは?」と思うかもしれません。
しかし重要なのは、魚介類そのものを避けるよりも同じ種類の魚介類を食べ続けないことです。
魚介類の種類そのものを変えていけば、特定の成分への偏りも小さくできます。
PUFA・重金属を控える視点での魚介類選び5ポイント
魚介類を選ぶときは、次の5つを一緒に見ると分かりやすくなります。
① 100gあたりの脂質量
脂質そのものが少なければ、PUFAの絶対量も少なくなりやすくなります。
② n-3系PUFA量
「脂肪酸中に何%あるか」ではなく、実際に100g食べたときの量を見るのがポイントです。
③ 魚の大きさ・食性・寿命
大型・肉食・長寿の魚ほどメチル水銀が蓄積しやすい傾向があります。
④ 部位
マグロなら赤身とトロではPUFA量が大きく違います。
一方、水銀は脂身だけに蓄積するものではなく、タンパク質と結合するため、「脂を落とせば水銀も減る」というものではありません。
⑤ 食べる頻度
同じ魚ばかりを食べず、魚介類・肉・卵などを組み合わせて食材を分散させる方法が取り入れやすいでしょう。
PUFA・重金属の両方を避ける魚介類5選
日常の食卓に選びやすい魚介類を選びました。
◎ マダラ
低脂質でPUFA量も非常に少なめ。
鍋、蒸し物、スープ、ホイル焼きなど油を使わない料理にも向いています。
◎ エビ
脂質そのものが少ないため、PUFAの絶対量も少なめ。
大型肉食魚のようなメチル水銀濃縮を考える必要も比較的小さく、さまざまな料理に使えます。
◎ タコ
真だこは非常に低脂質で、水銀含有の心配も少ない食材です。煮物、トマト煮、炊き込みご飯などにも使えます。
◎ イカ
スルメイカも脂質が少なく、魚介類の中ではタコと同様に、PUFAを抑えやすく水銀含有の心配も少ない食材です。
◎ 貝類(ホタテ・あさり・はまぐりなど)
貝類も脂質そのものが少ないものが多く、魚とは違った栄養素を取り入れられます。
まとめ|PUFAと水銀(重金属)は別々に考える
魚介類を選ぶとき、「オメガ3が多い・少ない」だけでは見えてこないことがあります。
例えば、
マグロ赤身
→ PUFAは少ない
→ 大型種では水銀を考慮
イワシ
→ 水銀は比較的少ない
→ PUFAは多い
メカジキ
→ PUFAは中程度
→ 水銀は注意
タラ・エビ・タコ・イカ・ホタテ
→ PUFAが少なめ
→ 大型肉食魚のような水銀蓄積も考えにくい
という違いがあります。
PUFAや重金属の影響を考えるなら、「種類・量・頻度を考えながら、いろいろな魚介類を楽しむ取り入れ方が、無理なく長く続けやすいのではないかと思います。
PUFAフリーという考え方を提唱・発信している崎谷博征医師の考え方も参考にしながら、本記事では一般的な栄養学とは異なる「PUFAをできるだけ控える」という視点と、公的機関が示す水銀・カドミウムの情報を分けて整理しています。
参考資料
・文部科学省「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」
・厚生労働省「魚介類に含まれる水銀について」
・厚生労働省「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」
・国立水俣病総合研究センター「魚介類とメチル水銀 水銀Q&A」
・食品安全委員会「魚介類等に含まれるメチル水銀に関する食品健康影響評価」
・食品安全委員会「食品中のヒ素」
※本記事は食品成分や公的機関の情報をもとにした一般的な情報提供を目的としています。特定の食事療法や治療を推奨するものではありません。妊娠中など、特に水銀摂取への配慮が必要な場合は厚生労働省の最新の注意事項をご確認ください。
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