牛スネ肉や牛すじ肉、取り手羽肉、鶏がらをじっくり煮込んだ手作りスープは、料理に豊かなコクと旨みを加えてくれます。
野菜スープやポタージュ、シチュー、リゾットなど、さまざまな料理に活用できる便利な存在です。
とはいえ、仕事や家事で忙しく、スープのストックを作る時間がない時もありますよね。
そんなときに活用したいのが、無添加の牛骨スープや鶏がらスープの粉末・レトルトタイプです。
今回は、それぞれの特徴や違い、PUFA(多価不飽和脂肪酸)を意識した商品の選び方、忙しい日の活用方法をご紹介します。
牛骨スープと鶏がらスープとは?
牛骨スープ(ボーンブロス)
ボーンブロス(Bone Broth)は、牛や鶏などの骨を水でじっくり煮込んで作るスープです。
牛骨のボーンブロスには、骨や骨に付着した結合組織から溶け出した成分が含まれます。
特に注目されているのが、コラーゲン由来のゼラチンです。
ゼラチンには、グリシンやプロリン、ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸が多く含まれています。
ただ、その含有量は使用する骨の部位や煮込み時間、製造方法によって異なります。
牛骨スープは、しっかりとした旨みやコクが特徴で、シチューや煮込み料理、リゾットなどに向いています。
鶏がらスープ(チキンストック)
鶏がらスープは、鶏の骨や軟骨、場合によっては肉や皮などを煮込んで作るスープです。
英語では、一般的に「Chicken Stock(チキンストック)」と呼ばれます。
鶏がらに含まれる結合組織からも、コラーゲン由来のゼラチンが抽出されます。
牛骨スープに比べて比較的あっさりとした風味で、和食・洋食・中華など幅広い料理に使いやすいのが特徴です。
ただ、どちらも濃度や材料次第で味わいは変わります。
牛骨スープと鶏がらスープの違い
| 比較項目 | 牛骨スープ | 鶏がらスープ |
| 主な原材料 | 牛骨・軟骨・結合組織 | 鶏がら・軟骨・結合組織 |
| 風味 | コクのある濃厚な味わい | 比較的あっさりした旨み |
| ゼラチン | 含まれる | 含まれる |
| グリシン | 含まれる | 含まれる |
| PUFAの特徴 | 牛脂は比較的PUFAの割合が低い | 鶏脂は牛脂よりPUFAの割合が高い傾向 |
| 向いている料理 | シチュー・煮込み・リゾット | スープ・ピラフ・ポタージュ |
| 手作りの保存 | 冷蔵・冷凍 | 冷蔵・冷凍 |
一般に、鶏の脂肪には、リノール酸などのPUFAが多く含まれる傾向があります。しかし、スープに含まれるPUFA量は、原料動物の種類だけでは判断できません。
スープの製造過程でどの程度脂質が取り除かれているかによって、大きく変わります。
鶏がらスープでも、脂質がほとんど除去された製品なら、PUFAの摂取量を抑えやすくなります。
スープに含まれるゼラチンとグリシン
牛骨スープや鶏がらスープの栄養的な特徴の一つが、コラーゲンに由来するアミノ酸です。
ゼラチンとは?|コラーゲンから生まれる天然のたんぱく質
ゼラチンは、動物の皮膚や骨、軟骨、腱などに豊富に存在するコラーゲンが、加熱によって変性し、水に溶け出したたんぱく質です。
コラーゲンは、皮膚や骨、血管、関節など、私たちの体のさまざまな組織を支える重要な構造たんぱく質です。
コラーゲンはもともと、3本の鎖がらせん状に組み合わさった丈夫な構造をしています。この構造が加熱によってほどけ、水に溶けやすい状態になったものがゼラチンです。
牛骨や鶏がらをじっくり煮込むと、骨の周囲に付着した軟骨や腱、皮などの結合組織からコラーゲンが溶け出し、加熱によってゼラチンへと変化していきます。
そのため、ボーンブロスは、ゼラチンを食事から取り入れることの出来る方法の一つとして知られています。
なぜ、冷やすとゼリー状に固まるの?
牛骨スープや鶏がらスープを冷蔵庫で冷やすと、ゼリーのようにプルプルと固まることがあります。
これは、温かいスープに溶けていたゼラチンの分子が、温度の低下によって部分的に結びつき、網目状の構造を作るためです。
この網目の中に水分が閉じ込められることで、スープ全体がゼリー状になります。
再び温めると、この構造がほどけて液体に戻ります。ただ、ゼラチンの量が少ない場合や、水分が多い場合には、冷やしても固まらないことがあります。
また、長時間の加熱によってゼラチンの分子が細かく分解されると、固まる力が弱くなる場合もあります。
冷やして固まらないからといって、ゼラチンやコラーゲン由来の成分がまったく含まれていないわけではありません。
ゼラチンに含まれるアミノ酸の特徴
ゼラチンには、一般的な肉のたんぱく質とは異なるアミノ酸組成があります。
特に多く含まれるのが、次の3種類です。
- グリシン: コラーゲンを構成する主要なアミノ酸で、体内ではたんぱく質の合成やさまざまな代謝に関わります。
- プロリン: コラーゲンの立体構造を形成するうえで重要なアミノ酸です。
- ヒドロキシプロリン: コラーゲンに特徴的なアミノ酸で、コラーゲンの構造を安定させる働きがあります。
特にグリシンは、コラーゲンを構成するアミノ酸残基のおよそ3分の1を占めています。
一方で、ゼラチンには必須アミノ酸のトリプトファンがほとんど含まれないため、単独では良質なたんぱく質源として十分とはいえません。
肉や卵、乳製品など、ほかのたんぱく質食品と組み合わせて取り入れることが大切です。
ゼラチンと美容・健康の関係
ゼラチンの原料となるコラーゲンは、皮膚の真皮や関節軟骨、腱などの構造を支える重要な成分です。
食事から摂取したゼラチンは、消化の過程でアミノ酸やペプチドに分解され、体内に吸収されます。
これらは、体内でたんぱく質を合成するための材料などとして利用されます。
コラーゲンペプチドの摂取と肌の水分量・弾力などについては研究が進められていますが、効果には個人差があり、ボーンブロスにも同じ効果があるとは断定できません。
美容や健康のためには、十分なたんぱく質に加えて、コラーゲンの合成に必要なビタミンCなども、日々の食事からバランスよく摂ることが大切になります。
PUFAを意識した食生活にも取り入れやすい
ゼラチン自体は、脂質をほとんど含まないたんぱく質です。
そのため、PUFA(多価不飽和脂肪酸)の摂取量を意識している方にとっても、取り入れやすい食品の一つです。
ただし、牛骨スープや鶏がらスープには、原材料や調理方法によって動物由来の脂肪が含まれる場合があります。
PUFAを抑えたい場合は、スープを冷やして表面に固まった脂肪を取り除いたり、脂質の少ない市販製品を選んだりするのがおすすめです。
ゼラチンの特徴を生かしながら、脂質量にも配慮することが、スープを上手に取り入れるポイントになります。
グリシンとは?
グリシンは、コラーゲンに豊富に含まれるアミノ酸の一つです。
体内では、たんぱく質の構成成分となるほか、さまざまな代謝にも関わっています。
また、プロリンやヒドロキシプロリンもコラーゲンの構造に関係する重要なアミノ酸です。
ボーンブロスは、これらの成分を食事に取り入れる方法の一つですが、含有量には商品ごとの差があります。
PUFAフリーから考える牛骨スープと鶏がらスープ
PUFAフリーという考え方を提唱・発信している崎谷博征医師は、糖代謝や脂質の酸化に注目した食生活について情報を発信しています。
その考え方の一つが、リノール酸などの多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取をできるだけ抑えることです。
この視点から牛骨スープや鶏がらスープを見ると、次のポイントが重要とされています。
脂質の少ないスープを選ぶ
PUFAは脂質に含まれる脂肪酸の一種です。そのため、脂質そのものが少ないスープであれば、PUFAの摂取量も少なくなります。
鶏がらスープの場合は特に、鶏脂がどれくらい残っているかを確認するのが重要になります。
5.市販の無添加スープを選ぶときの5つのポイント
忙しいときに便利な市販スープですが、商品によって原材料や栄養成分はさまざまです。
選ぶ際には、次の5つを確認することをおすすめします。
① 原材料がシンプルなものを選ぶ
牛骨、鶏がら、食塩など、何が使用されているかを確認します。
「無添加」と表示されていても、植物油脂や糖類などが含まれている場合があります。
② 脂質量を確認する
原材料に加えて栄養成分表示の脂質量を確認します。
特に、粉末タイプは濃縮されているため、使用量当たりの脂質を比較することが大切です。
③ 食塩相当量を確認する
スープの素には、あらかじめ食塩が含まれている商品もあります。
味付け前に食塩量を確認し、料理全体の塩分を調整しましょう。
④ 保存方法を確認する
常温保存できる粉末やレトルトタイプは、ストックがない日の料理に便利です。
ただ開封後に冷蔵保存が必要になる商品もあります。
⑤ 料理との相性を考える
牛骨スープは肉料理や煮込み料理に、鶏がらスープは野菜料理やピラフなどによく合います。
万能な商品を一つ選ぶより、用途に合わせて使い分けるのもおすすめです。
栄養成分を確認できた、市販の無添加スープ・パウダー商品
ここでは、メーカー公式サイトで原材料や栄養成分を確認できた商品をご紹介します。
① ホライズンファームズ|グラスフェッド ビーフ ボーンブロスパウダー
オーストラリア産のグラスフェッド牛の骨から作られた、粉末タイプのボーンブロスです。
保存料や香料を使用せず、必要な分だけお湯に溶かして使えるのが特徴です。
商品情報
| 項目 | 内容 |
| 商品名 | グラスフェッド ビーフ ボーンブロスパウダー |
| 内容量 | 100g |
| 価格 | 3,980円(税込・確認時点) |
| 原材料 | 牛骨由来ボーンブロス88%、海塩 |
| 使用目安 | 3gに対してお湯100ml |
| たんぱく質 | 1.7g/3g |
| グリシン | 348mg/3g |
| 保存方法 | 常温保存 |
公式サイトでは、原材料だけでなくアミノ酸の組成も詳しく紹介されています。
また、メーカーは主にお湯に溶かして飲む用途を案内しています。料理に使用する場合は、少量ずつ加えて風味を確かめるとよいでしょう。
こんな方におすすめ
普段は手作りの牛スープを使いながら、忙しい日に少量のボーンブロスを取り入れたい方。
② 日本ピュアフード|鶏がらスープ
こちらは、国産鶏がらを原材料とした液体タイプのスープです。
一晩じっくり炊き出した鶏がらの旨みを、そのまま料理に使用できます。
商品情報
| 項目 | 内容 |
| 商品名 | 鶏がらスープ |
| 内容量 | 260g |
| 原材料 | 鶏がら(国産) |
| 食塩 | 原材料として不使用 |
| エネルギー | 21kcal/260g |
| たんぱく質 | 5.2g/260g |
| 脂質 | 0.0g/260g |
| 食塩相当量 | 0.3g/260g |
原材料は国産の鶏がらのみ。
食塩を加えていないため、料理に合わせて味付けを調整しやすいのが特徴です。
また、栄養成分表示では脂質が0.0gとなっています。
表示上の0.0gは完全な無脂肪を保証するものではありませんが、脂質を抑えたい方にとって、選びやすい商品の一つです。
こんな方におすすめ
鶏がらスープを使ったポタージュや野菜スープ、ピラフなどを手軽に作りたい方。
※取り扱い店舗や配送地域は、販売店によって異なります。
③ 日本スープ株式会社|丸どりだしデラックス
こちらは、丸鶏を使用したレトルトタイプのスープストックです。
メーカーによると、食品添加物を使用せず、脂質を取り除いた製品で、酵母エキスも使用していません。
商品情報
| 項目 | 内容 |
| 商品名 | 丸どりだしデラックス |
| 内容量 | 250g×2袋 |
| 価格 | 1,331円(税込・掲載時点) |
| 原材料 | 丸鶏、濃縮チキンだし |
| 特徴 | 無添加・無脂肪・酵母エキス不使用 |
| 保存方法 | 常温保存 |
メーカー公式サイトでは、スープや煮込み料理への利用が紹介されています。Nippon Soup
常温保存できるため、忙しい日のスープストックとして活用しやすい商品です。
こんな方におすすめ
日常的に鶏スープを料理に使用する方や、家族の食事作りでストックを多めに用意したい方向けの商品です。
④ ホライズンファームズ|オーガニック チキンストックパウダー
もう一つ、粉末タイプの商品もご紹介します。
こちらは、有機JAS認証を受けたチキンストックパウダーです。
鶏のだしに野菜やハーブ、スパイスなどを組み合わせた、調味料タイプの製品です。
商品情報
| 項目 | 内容 |
| 商品名 | オーガニック チキンストックパウダー |
| 内容量 | 160g |
| 価格 | 1,980円(税込・確認時点) |
| 使用目安 | 3gに対して水250ml |
| たんぱく質 | 0.2g/3g |
| 脂質 | 0.2g/3g |
| 食塩相当量 | 1.3g/3g |
原材料には、鶏だしのほか、有機コーンスターチ、有機粗糖、有機オリーブオイル、有機野菜などが使用されています。
そのため、添加物不使用でも、油脂が加えられている製品である点には注意が必要です。
また、食塩相当量が3g当たり1.3gと比較的多いため、料理に使う際は塩の量を調整しましょう。
こちらは鶏がらだけを煮出したスープとは異なり、ハーブや野菜の風味を加えた調味料になります。Horizon Farms
市販スープを比較|どれを選ぶ?
今回ご紹介した商品を比較すると、次のようになります。
| 商品 | 形状 | PUFAを意識した選び方のポイント |
| 牛骨ボーンブロスパウダー | 粉末 | グラスフェッドビーフのスープ |
| 日本ピュアフード 鶏がらスープ | 液体 | 脂質0.0g表示で選びやすい |
| 日本スープ 丸どりだしデラックス | レトルト | 無脂肪タイプで常温保存可能 |
| オーガニック チキンストックパウダー | 粉末 | コーンスターチ、オリーブオイル配合。塩分にも注意 |
鶏脂はPUFAの割合が高い傾向にありますが、脂質を十分に取り除いた鶏がらスープであれば問題ありません。ただし、個別製品のPUFA含有量が公表されていない場合は、正確な比較はできません。
忙しい日におすすめ!スープストックの活用方法
牛骨スープや鶏がらスープは、さまざまな料理に活用できます。
特におすすめなのが、ホットクックを使った時短料理です。
① 野菜たっぷりポタージュ
玉ねぎやじゃがいも、マッシュルームなどを煮込む際に、鶏がらスープを使用します。
野菜の甘みと鶏だしの旨みを組み合わせることで、シンプルな味付けでもコクのあるスープに仕上がります。
仕上げに牛乳やバターを加えるのもおすすめです。
② 牛スネ肉の煮込み料理
牛骨スープは、牛スネ肉や牛すじ肉を使った料理によく合います。
スープの旨みを利用することで、調味料を増やしすぎずに、味に深みを加えられます。
パウダーを使用する場合は、塩分や濃度を確認しながら少量ずつ加えましょう。
③ ピラフやリゾット
炊飯器やホットクックで作るピラフにも、スープストックが活躍します。
特にエビピラフやきのこのピラフには、鶏スープがよく合います。
リゾットの場合は、牛骨スープを使うと、よりコクのある味わいに仕上げられます。
④ 鶏団子の和風スープ
鶏団子に長ねぎやきのこ、しょうがなどを組み合わせた和風スープにも、鶏がらスープがよく合います。
鶏の旨みを加えながら、しょうがや柚子こしょうで風味を整えると、すっきりとした味わいに仕上がります。
手作りスープと市販品の上手な使い分け方
手作りのスープは、材料や調味料を自分で選べることが魅力です。
一方、市販のスープやパウダーは、忙しいときでも手軽に料理を作れるというメリットがあります。
手作りスープが難しい時は市販のスープを使うなど、生活スタイルに合わせて使い分けることをお勧めします。
例えば、週末にまとめてスープを作り、冷凍保存しておけば、平日の料理作りが楽になります。それでもストックが足りなくなることがあると思います。
そんなときは、市販のスープを補助的に活用することで、無理なくスープを使った手作り料理を続けられます。
まとめ|忙しい日こそ、便利な食材を上手に活用
牛骨スープと鶏がらスープは、料理に旨みとコクを加えてくれる便利な食材です。
また、製法によってはゼラチン由来のアミノ酸を含むことも特徴の一つです。
PUFAを意識する場合には、次のポイントを大切にしましょう。
- 原材料を確認し、用途に合ったスープを選ぶ。
- 脂質量を確認し、必要に応じて低脂質タイプを活用する。
- 「無添加」と「PUFAが少ない」は必ずしも同じではない。
- 粉末タイプでは、食塩や植物油脂の配合にも注意する。
- 手作りスープと市販品を上手に使い分ける。
毎日の食事は、無理なく続けられることも大切です。
時間がある日は、牛スネ肉や牛すじ肉からじっくりスープを作る。
忙しい日は、原材料を確認した市販の無添加スープを活用する、という柔軟な食事作りが、毎日の暮らしを少し楽にしてくれるのではないでしょうか。
便利な食材を上手に取り入れながら、美味しく、心地よく続けられる食生活を楽しみたいですね。
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