ハチミツに含まれる糖質は、私たちの体でエネルギー源として利用されます。
ハチミツの主成分は、ブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)です。ハチミツはおよそ80%が炭水化物で、その多くをこの2種類の糖が占めています。(PubMed)
ただ、ブドウ糖と果糖は、体の中でまったく同じように使われるわけではありません。
この記事では、ハチミツに含まれる糖が体内でどのように利用されるのかを整理しながら、砂糖との違いや、崎谷博征氏が著書の中で紹介している「糖とエネルギー代謝」という考え方についても見ていきたいと思います。
古代から現代へーハチミツが再び注目される理由
ヨーグルトに入れたり、紅茶に入れたり、ハチミツは、私たちの暮らしに自然となじんでいる甘みです。
ハチミツは、人類の歴史の中で”特別な食品として長く扱われてきました。
現在では、加工食品や人工甘味料が溢れている中、「自然由来の食品」として改めて注目されています。
単に「体によさそう」というイメージだけではなく、ハチミツに含まれる成分や、ミツバチによる製造プロセスにも科学的な関心が集まっています。
この記事では、 ハチミツの歴史 、ミツバチが作り出す製造メカニズム、 含まれる成分と体への働きなどを「糖のエネルギー代謝」、「 日常生活での取り入れ方 」など著者の考え方を、わかりやすく整理して解説します。
ハチミツを深く知ることで、毎日の食の選択も少し変わってくるかもしれません。
ハチミツの歴史|石器時代から現代医学まで8,000年の軌跡
人類最古クラスの「天然食材」
ハチミツの歴史は非常に古く、今から約8,000年前の石器時代には、すでに人類がハチミツを採取していたと考えられています。
農耕が始まる以前、狩猟採集の時代から利用されていたとのことです。 ハチミツは、人類が太古から親しんできた天然のエネルギー源でもありました。
古代文明でも重宝されていた
古代エジプトでは、ハチミツは食用だけでなく、 医療目的、保存処理、宗教儀式 などにも使われていたとされています。
さらに古代ギリシャでは、「西洋医学の父」と呼ばれるヒポクラテスが、発熱や傷、消化器系の不調に対してハチミツを活用していたと伝えられています。
世界中の文化に登場するハチミツ
ハチミツの価値は、一部の地域だけで語られてきたわけではありません。 聖書 コーラン アーユルヴェーダ など、宗教や伝統医学の中にもハチミツの記述が数多く残されています。
これほど幅広い文化で共通して重視されてきたこと自体が、ハチミツの存在感の大きさを物語っています。
近代医学の発展で一度は後退
20世紀になると、石油化学をベースにした近代医療や加工食品が急速に普及しました。 その流れの中で、ハチミツは一時的に”昔ながらの自然食品”として扱われるようになります。
近年では、 慢性疾患の増加、食品添加物への警戒、自然食品志向 などを背景に、ハチミツの成分や生理学的な働きを見直す研究が再び増えてきています。
ハチミツの製造工程|ミツバチが生み出す精巧な仕組み
ハチミツは「ただの花の蜜」ではない
ハチミツは、花の蜜をそのまま集めたものだと思われがちです。 ですが実際には、ミツバチたちによる非常に精巧な加工プロセスを経て完成しています。
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花蜜を集める
働きバチは、花の蜜腺から花蜜を集め、「蜜袋(みつぶくろ)」という器官に一時的に蓄えます。 そして巣に戻ると、別のミツバチへ口移しで受け渡しを行います。
この過程で重要になるのが、ミツバチが分泌する酵素です。
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糖を分解する
花蜜には主に「ショ糖」が含まれています。 ミツバチは「インベルターゼ」という酵素を使って、このショ糖を ブドウ糖 果糖 という単純な糖に分解します。
この工程によって、ハチミツは単なる砂糖水とは異なる性質を持つようになります。
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水分を飛ばして保存性を高める
採取直後の花蜜は水分が多く、そのままでは傷みやすい状態です。
そこでミツバチたちは羽を高速で動かし、巣の中に風を送ります。 すると水分が蒸発し、ハチミツ特有の濃厚な状態へ変化していきます。
水分量が減ることで浸透圧が高まり、細菌や酵母が繁殖しにくい環境になります。
これが、ハチミツが長期保存できる理由のひとつです。 最後は蜜ろうでフタをして、外部の湿気や汚染から守ります。

ハチミツの成分と体へのはたらき|ブドウ糖・果糖からミトコンドリアまで
200種類以上の成分を含む複合食品
ハチミツは単なる甘味料ではありません。 実際には、 糖質 アミノ酸 ビタミン ミネラル 酵素 ポリフェノール など、200種類以上の成分を含む複合食品だといわれています。
その中心となるのが、ブドウ糖と果糖という二種類の単糖類です。
ブドウ糖と果糖の違い
ブドウ糖は体に吸収されやすく、脳や筋肉のエネルギーとして素早く利用されます。 果糖は主に肝臓で代謝され、比較的ゆるやかにエネルギーへ変換されます。
この「即効性」と「持続性」の両方を持つことが、ハチミツの特徴のひとつです。
ミトコンドリアとの関係
私たちの細胞には、「ミトコンドリア」というエネルギー工場のような器官があります。 ここではATPというエネルギー物質が作られており、糖代謝が重要な役割を担っています。
著者の考え方によると、ハチミツに含まれる糖がこのエネルギー産生をサポートする可能性があるといいます。
また、糖代謝で発生する二酸化炭素が、酸素を細胞へ届けやすくする「ボーア効果」に関係する可能性も示唆されています。
ボーア効果とは、血液中のヘモグロビンが運ぶ酸素を、二酸化炭素(CO2)が切り離してミトコンドリアへ届ける仕組みです。
細胞内にCO2が不足すると、酸素がうまく供給されず「細胞の酸欠」が起こります。
ハチミツなどの良質な糖を摂ると糖代謝が活発になり、CO2が多く産生されてボーア効果が促進され、さらなる酸素供給→代謝向上という好循環が生まれます。
このCO2の働きを「ミラクルホルモン」と表現し重視しています。

白砂糖との違い
著者の考え方によると、白砂糖の主成分であるショ糖は体内で分解されてから吸収されるのに対し、ハチミツはすでに単糖類の状態になっているため、比較的スムーズに利用されやすいといいます。
さらにハチミツには、ビタミンB群・カリウム・マグネシウム・ポリフェノールなども微量ながら含まれています。 成分の多様性という点で、精製糖とは大きく異なる食品といえるでしょう。
「糖のエネルギー代謝」がなぜ大切なのか――崎谷医師の考え方をわかりやすく解説
ここからは、崎谷博征氏が著書『奇跡のハチミツ自然療法』などで紹介している考え方について見ていきます。
崎谷氏は、糖を「できるだけ避けるべきもの」としてではなく、体のエネルギー代謝を考えるうえで重要な栄養源として捉えています。
特にハチミツについては、ブドウ糖と果糖が組み合わさって含まれていることに注目し、エネルギー代謝を支える食品として積極的に評価しています。
崎谷氏の理論では、体が十分に糖を利用できる状態を保つことが、代謝を考えるうえで重要とされています。
これは、糖質制限や「糖=悪」という考え方とはかなり異なる視点です。
ここで大切なのは、崎谷氏の考え方と、一般的な医学・栄養学上の知見を分けて考えることです。
ハチミツに含まれるブドウ糖や果糖がエネルギー代謝に利用されること自体は一般的な生化学の範囲ですが、そこからどの程度ハチミツを積極的に摂るべきかについては、さまざまな考え方があります。
崎谷氏の理論もひとつの視点として紹介しながら、一般的な研究とも照らし合わせて考えていきたいと思っています。
脳と赤血球は「糖」しか使えない
脳や赤血球は、基本的に糖をエネルギー源としてしか利用できません。そのため体は、糖が不足すると(=低血糖になると)、ストレスホルモンを出して脂肪や筋肉を分解し、糖を作り出そうとします。
著者はこの低血糖の状態を、体にとって大きな負担になると説明しています。
「脂肪を燃やす」ことへの疑問
体内に蓄積している脂肪の多くは、PUFA(多価不飽和脂肪酸)と呼ばれる種類です。
PUFA(多価不飽和脂肪酸)は現代人の体脂肪の主成分で、「脂肪毒」とも呼ばれる毒性の強い物質です。
PUFAは [オメガ3系 DHA・EPA(青魚に多い)αリノレン酸(亜麻仁油・えごま油)オメガ6系 リノール酸(サラダ油・コーン油・大豆油)、アラキドン酸など酸化しやすい油のことです]
低血糖やダイエットで体脂肪が分解されると血中にあふれ出し、糖代謝の低下・活性酸素の増加を招き、ガンや糖尿病・老化などあらゆる病態の原因となります。
著者は、体内のPUFAをむやみに分解して血液中に放出することを「非常に危険な行為」と強く警告しています。
脂肪分解(リポリシス)が起きると、このPUFAが血液中に放出されます。 著者はこれを「脂肪毒」と呼び、血液中にPUFAがあふれた状態は体にとって好ましくないと指摘しています。
「痩せる=脂肪分解」は良いことのように思えますが、体の仕組みから見ると決してそうではない、というのが著者の見解です。
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PUFAと甲状腺ホルモンの関係
糖をエネルギーに変えるには甲状腺ホルモンが欠かせません。
著者によると、血液中に放出されたPUFAはこの甲状腺ホルモンの働きを妨げる可能性があり、結果として糖のエネルギー代謝が低下しやすくなると考えられています。
筋トレしても筋肉がつきにくい場合がある理由
「しっかり筋トレしているのに筋肉が増えない」という場合、著者は糖不足(低血糖)との関係を指摘しています。
運動中に糖が足りないと、体はエネルギーを補うために筋肉を分解することがあります。
さらにその過程で生じるアンモニアが甲状腺に負担をかけ、糖のエネルギー代謝をさらに妨げる可能性があるとされています。

ファスティング・糖質制限を見直す視点
糖質制限やファスティング(断食)は、体を意図的に低血糖に近い状態にします。
著者は、脂肪やタンパク質はあくまで「緊急時のエネルギー源」であり、それらを長期的にメインの燃料にし続けることは、体への負担につながりうると述べています。
ハチミツを取り入れるときに知っておきたいこと
WHOでは、ハチミツに含まれる糖も「遊離糖(free sugars)」に含め、成人・子どもともに遊離糖の摂取を総エネルギー摂取量の10%未満にすることを推奨しています。さらに5%未満に減らすことで追加的な健康上のメリットが期待できるとしています。(世界保健機関)
糖尿病などで血糖管理をしている方は、ハチミツも糖質として血糖値に影響します。自己判断で量を増やすのではなく、医師や管理栄養士などに相談してください。
なお、1歳未満の乳児にはハチミツを与えてないでください。
ハチミツの日常的な活かし方|運動・睡眠・美容への取り入れ方
「知る」から「使う」へ
ハチミツの魅力は、日常に取り入れやすいことです。 特別な準備は必要なく、ティースプーン一杯から始められます。
運動前後のサポートに
運動前に少量のハチミツを摂ることで、活動時のエネルギー補給に役立つ可能性があります。 ブドウ糖による即効性と、果糖による持続性の組み合わせが特徴です。 温かい飲み物に溶かして飲むのも取り入れやすい方法です。
睡眠前のリラックスタイムに
就寝前に少量のハチミツを摂る習慣を取り入れる方法もあります。 睡眠中も脳はエネルギーを消費しているため、夜間のエネルギーバランスとの関係が注目されています。 ホットミルク・白湯・ハーブティーなどに溶かすと、リラックス習慣としても続けやすくなります。
美容・スキンケアへの活用
ハチミツは保湿性が高いため、古くから外用としても使われてきました。 フェイスパック・スクラブ・ハンドケアなどに使われることがあります。
ただし肌質によって合う・合わないがあるため、使用前にはパッチテストを行うようにしましょう。
毎日簡単に摂取できるハチミツ
ハチミツをそのまま食べたり、「白砂糖の代わり」に使ったり、どんな使い方でも取り入れられますので、毎日続けるのが容易な食べ物です。
料理やスィーツ以外に、 ヨーグルト・ホットミルク・コーヒー・紅茶などに加えるだけでも、日常的に自然に取り入れられます。
まとめ|ハチミツを「知る」ことが食の選択を変える
8,000年受け継がれてきた自然の知恵
この記事では、 ハチミツの歴史 製造工程 成分の特徴 、崎谷医師が説く糖のエネルギー代謝の考え方 、日常での活用法 についてお伝えしました。
ハチミツが長い歴史の中で重宝されてきた背景には、単なる甘さだけではない「成分の豊かさ」があります。
崎谷医師の考え方によると、現代人は糖のエネルギー代謝が低下しやすい環境に置かれており、ハチミツのような自然由来の糖を意識して取り入れることが、健康維持のひとつのアプローチになるといいます。
もちろん、どんな食品も”万能”ではありません。 大切なのは、バランスのよい食習慣を土台にしながら、その一部として上手に取り入れることです。
まずは今日のティースプーン一杯から。 そんな小さな習慣が、日々の食との向き合い方を少し変えてくれるかもしれません。
※ 免責事項
本記事は栄養学・生化学に関する一般的な情報の紹介を目的としており、特定の食品による病気の治療・予防・改善を保証するものではありません。
持病をお持ちの方、通院・投薬治療中の方は、食生活を変える前に必ず医師にご相談ください。
また、1歳未満の乳児には、乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、ハチミツを与えないでください。
参考文献・参考情報
崎谷博征著 『奇跡のハチミツ自然療法』
Bogdanov S, et al. Honey for nutrition and health: a review. Journal of the American College of Nutrition. 2008. ハチミツの主成分や栄養学的特徴についてまとめたレビュー。(PubMed)
Hills SP, et al. Honey Supplementation and Exercise: A Systematic Review. Nutrients. 2019. ハチミツの炭水化物組成と運動時の利用について検討したシステマティックレビュー。(PubMed)
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